工場の熱中症対策では、「その日の暑さ」や「作業者の体調」をどのように確認し、記録として残すかが課題になります。そこで役立つのが、熱中症予防管理表です。
熱中症予防管理表とは、WBGT(暑さ指数)や気温・湿度、作業者の体調、水分・塩分補給、休憩の取得状況などを、毎日決まった項目で確認・記録するための管理シートです。「暑いから気をつける」といった感覚的な対応ではなく、現場の状況を見える化し、対策の抜け漏れを防ぐことを目的としています。
2025年6月からは、職場の熱中症対策が罰則付きで義務化され、体調不良者を早期に把握する体制や対応手順の整備・記録が、これまで以上に重要になりました。ここでは、工場向けに熱中症予防管理表の作り方、記入したい項目、運用のポイントを解説します。
熱中症予防管理表は、工場や作業現場で毎日の熱中症リスクを確認・記録するためのシートです。作業前や作業中に、暑さ指数(WBGT)や気温、作業者の体調、水分・塩分補給、休憩の状況などをチェックし、記入していきます。
工場では、炉やボイラー、乾燥機の周辺、空調が効きにくい大型建屋、蒸気を使う高湿度の工程など、屋内でも熱中症リスクが高まる場面があります。しかし、暑さの感じ方は人によって差があり、体調不良のサインは見落とされがちです。管理表を使って「誰が」「どの作業を」「どのような状態で行っているか」を記録することで、危険な兆候に早く気づき、重症化を防ぎやすくなります。
記入は、安全衛生の担当者や職長など、現場を管理する立場の人が中心となって行うのが一般的です。朝礼やミーティングの場で確認しながら記入すると、作業者への周知もあわせて行えます。
熱中症予防管理表には、その日の暑熱環境と作業者の状態、実施した対策をまとめて記録します。工場で用意する場合、次のような項目を盛り込むと現場で使いやすくなります。
| 記入項目 | 記録・確認する内容 |
|---|---|
| 日付・天候 | 作業日、天気、最高気温の予測 |
| WBGT・気温・湿度 | 作業場所で実測したWBGT値、気温、湿度 |
| 作業場所・作業内容 | ライン、炉前、倉庫などの場所と作業の種類 |
| 作業者の体調(始業前) | 睡眠不足、朝食の有無、発熱、下痢、二日酔い、持病の有無 |
| 暑熱順化の状況 | 新入社員、配置転換直後、長期休暇明けかどうか |
| 水分・塩分補給 | 補給のタイミング、経口補水液や塩分タブレットの用意 |
| 休憩 | 休憩の時間帯・回数、涼しい休憩場所の確保 |
| 異常時の対応・報告 | 体調不良者の有無、報告先、実施した応急処置 |
| 記録者・確認者 | 記入した担当者と、確認した管理者の氏名 |
特に重要なのが、作業前の体調確認です。睡眠不足や食事抜き、発熱、二日酔いなどがある作業者は、熱中症を発症しやすくなります。管理表にチェック欄を設けておくと、始業前に一人ひとりの状態を確認しやすくなります。
WBGT(暑さ指数)は、気温だけでなく湿度・輻射熱・風の影響を踏まえて熱中症リスクを判断する指標です。管理表にWBGT値を記録するだけでなく、「その値が基準を超えていないか」を判断できるようにしておくことが大切です。
WBGT基準値は、作業の身体的な負荷(身体作業強度)と、作業者が暑さに慣れているか(暑熱順化の有無)によって異なります。厚生労働省の資料をもとにした主な基準値は次のとおりです。
| 区分 | 作業の例 | 暑熱順化者 | 暑熱非順化者 |
|---|---|---|---|
| 区分0(安静) | 安静、楽な座り作業 | 33℃ | 32℃ |
| 区分1(低代謝率) | 軽い手作業、書く、点検、組み立て | 30℃ | 29℃ |
| 区分2(中程度代謝率) | くぎ打ち、しっくい塗り、草むしり | 28℃ | 26℃ |
| 区分3(高代謝率) | ショベル作業、ハンマー作業 | 26℃ | 23℃ |
身体負荷がさらに大きい区分4(極高代謝率)では、基準値はより低く設定されます。また、防護服や長袖作業着など通気性の悪い衣服を着用する場合は、基準値に着衣補正値を加えて、より厳しく判断する必要があります。
WBGT値は、JISに適合したWBGT指数計を使い、作業者が実際に立つ場所で実測するのが基本です。屋内では熱源に近い位置、床上0.5〜1.5mの高さで測定します。環境省の「熱中症予防情報サイト」では地域ごとの予測値も確認できますが、あくまで予報値のため、現場での実測とあわせて活用しましょう。
2025年6月1日から、改正労働安全衛生規則により職場の熱中症対策が義務化されました。対象となるのは、WBGT28℃以上または気温31℃以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業です。工場の多くの作業がこの条件に当てはまる可能性があります。
事業者に義務づけられた主な対応は、次のとおりです。
これらの対応を怠り、熱中症を発症させた場合などには、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
熱中症予防管理表に、WBGTの測定値や体調確認、実施した対策、報告体制の周知状況を記録しておくと、義務化への対応状況を示す記録として活用でき、安全配慮義務を果たしていることの証跡にもなります。
管理表は、作成するだけでなく、現場で無理なく使い続けられることが重要です。工場で運用する際は、次の点を意識しましょう。
睡眠不足、食事抜き、発熱、下痢、二日酔いなどは、熱中症の発症リスクを高めます。始業前に管理表のチェック欄で一人ひとりの体調を確認し、無理をさせない体制をつくりましょう。異変を感じたときにすぐ報告できる雰囲気づくりも大切です。
同じ工場内でも、空調の効いた検査室と炉前作業では暑さが大きく異なります。WBGTは代表値で判断せず、リスクの高い作業場所で実測し、管理表に記録しましょう。基準値を超える場合は、送風機やスポットクーラーの設置、作業時間の短縮などの対策につなげます。
管理表は、記入して保管するだけでは意味がありません。測定結果や体調の記録を、翌日の作業計画、休憩ルール、人員配置、設備改善に反映することで、現場で機能する対策になります。
担当者が不在でも記録が途切れないよう、記入項目はできるだけシンプルにし、チェック方式を中心に設計しましょう。厚生労働省や関係団体が公開している自主点検表やチェックリストを参考に、自社の作業に合わせて項目を調整すると、実用的な管理表を作りやすくなります。
熱中症予防管理表は、工場内の暑熱環境と作業者の状態、実施した対策を毎日確認・記録するためのシートです。WBGTや気温、体調、水分・塩分補給、休憩、報告体制までを見える化することで、熱中症の兆候に早く気づき、重症化を防ぎやすくなります。
2025年6月の義務化により、体調不良者を把握する体制や対応手順の整備・周知が求められています。管理表への記録は、日々の安全管理だけでなく、義務化対応や安全配慮義務の証跡としても役立ちます。自社の作業に合わせた様式を用意し、作業者任せにせず、工場全体の仕組みとして熱中症対策を管理していきましょう。
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