2025年6月から、厚生労働省の省令改正により「熱中症対策」の義務化が罰則付きで始まる予定です。特に夏場に高温多湿になりやすい工場や製造現場では、従業員を熱中症から守るため、徹底した対策が求められます。ここでは、熱中症対策を検討中の工場運営者に向けて、どんな準備や対策が必要かを具体的にまとめました。
近年、日本の夏は異常な高温になる傾向が強まっています。職場における熱中症の死傷者数は年々増加し、2022年・2023年には30人以上の死亡事例が報告されました。厚生労働省の調査では、熱中症が重症化する原因の多くが「初期症状の見逃し」「対応の遅れ」にあると分析されています。
そこで、気温31度またはWBGT(暑さ指数)28度以上になる現場で1時間以上、もしくは1日4時間以上作業する場合、
これらを罰則付きで事業者に義務づける流れとなっています。違反した場合は6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があるため、早めの準備が必要です。
参照元:職場における熱中症対策の強化について|厚生労働省【PDF】
(https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001385232.pdf)
製造ラインが長大な大型工場や、加工機械・熱源が多い現場は、スポット的に冷却しても周囲が高温に保たれやすく、全体が十分に冷えないケースがあります。また、ライン全体に風を送ると製品の品質に影響が出る可能性もあります。たとえば、微細部品を扱う職場では、余計な気流によるホコリの飛散や静電気の影響を避けたいという理由で、冷風を強く流しづらい課題を抱えていることも少なくありません。
化学物質を扱う工場などでは、防護服やゴーグル、手袋を着用することで外気との通気が悪くなり、体温がこもりやすくなります。300人以上が働くような大規模工場では作業工程やエリアごとに条件が異なるため、場所によっては「防護服がないと作業できないが、暑さで熱中症のリスクが高い」というジレンマが生じがちです。
「風を強く送れない環境だけれど、冷房を効率的に行いたい」と悩まれている方に向けて、以下のような対応策をおすすめします。
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空調設備や休憩場所などのハード面だけでなく、義務化によって特に重視されるのが「報告体制」と「対応手順」の確立です。
300人以上の企業規模で予算500~1000万円を想定している場合、大がかりな空調更新や冷却設備の導入が検討対象になるかもしれません。確かに短期的には大きな出費ですが、熱中症による労働災害を防ぐことで、以下のリスクやコストを回避できます。
熱中症対策は、従業員の安全と健康を守るための重要な投資です。夏季の人材不足や突発的な休業を未然に防ぐことで、業務効率や生産性を保ち、ひいては企業の信頼向上にもつながります。
2025年6月に施行される新たな義務化制度により、多くの事業者が迅速な対応を求められる状況となっています。この変化に対応するためには、企業単独での取り組みだけでなく、「政府からの支援制度」や「業界全体での連携」が重要な鍵となってきます。ここでは、それぞれの取り組みについて詳しくご紹介します。
企業が従業員の健康を守るために導入する設備には、国や地方自治体からの補助金が適用されるケースがあります。たとえば、以下のような設備が対象になり得ます。
これらの設備の導入にかかる費用の一部が助成されるため、コスト面のハードルが下がり、より多くの企業が安全対策を実施しやすくなります。最新の制度内容や申請方法については、地域の産業振興センターや厚生労働省の公式ウェブサイトで情報を確認することをおすすめします。
補助金に加え、企業が行う熱中症対策に関連する設備投資については、税制上の優遇措置が設けられる可能性があります。たとえば、減価償却の特例や法人税の控除などが含まれます。また、政府系金融機関や一部地方銀行では、これらの取り組みを対象とした「低金利融資制度」を提供している場合もあります。大規模な投資を一度に行わなければならない企業にとって、こうした制度は資金負担の軽減につながります。
製造業や建設業などの業界団体では、業界全体の安全水準を底上げするために、以下のような支援を行っています
これにより、特に中小規模の事業者であっても、法改正の内容や有効な取り組み事例をスムーズに取り入れることが可能となります。
近年では、各地の企業が実践している熱中症対策の事例を集めた「情報共有プラットフォーム」の整備も進んでいます。こうした場では、以下のような効果が期待できます。
このように、業界全体で知識やノウハウを持ち寄ることによって、効果的な熱中症対策の導入が促進され、結果として労働環境全体の安全性が向上することが期待されます。
2025年6月からは罰則付きの義務化が本格的に適用されます。大型工場の場合、設備導入やマニュアル整備に時間を要することが多いので、今のうちから次のステップで準備を進めることをおすすめします。
暑さ対策を強化することで、従業員が安心して働ける環境づくりにつながります。熱中症リスクの高い現場だからこそ、早めの行動が肝心です。ぜひ今回の記事を参考に、自社の工場環境を見直してみてください。
工場の運営を担うみなさまが、万全の熱中症対策を整え、生産性と安全性を両立できることを心より願っています。質問や疑問点がございましたら、遠慮なく専門業者や産業医などにご相談ください。従業員の健康を守る取り組みが、企業全体の成長と信頼獲得につながるはずです。
「大空間であっても個人を十分に冷却できる」という熱中症対策の新たなソリューションとして注目を集めているのがチラー水冷式身体冷却システム「COOLEX」。7~20℃の冷水をホース通して専用ウェア内に循環させ、酷暑現場であっても防護服を着ていても作業者個人をしっかり冷却します。同時に複数人を冷却できるシリーズ「COOLEX Multi」もラインナップ。当調査チームはこの「COOLEX」に注目し、商品の詳細や実際の導入事例について取材してみました。